研究概要 |
本研究は,超低床式車両を用いた路面電車(以下,低床式LRT)を対象として,主観的価値に基づく交通事業評価手法を確立することを目的とする. 最終年度に当たる平成15年度は,初年度に構築した主観的価値の曖昧性を取り扱うことのできるファジィ理論に基づく調査分析方法を改良して,CVMにより計測した主観的価値の区間推定の方法を提案した.その成果は,日本都市計画学会,土木学会およびアジア交通学会において発表した. また,路面電車の低床化に対する主観的価値のバイアス修正のための方法を以下の2点に着目して提案した. (1)抵抗回答の修正方法 低床式LRTの導入,増発に経済的価値は認めるものの,支払方法などに対して反対のため,データが0円あるいは欠損している場合は,無回答データの補完方法を援用してEMアルゴリズム法によりバイアスを修正した. (2)負価値回答の修正方法 低床式LRTの導入,増発に対して反対である者はWTP質問に対して無回答の場合が少なくない.そこでこのような場合は本来負価値のデータが0円で打切られていると仮定して,打ち切りデータの補正方法を適用した. 最後に,熊本市および広島市で導入された低床式路面電車に対する利用者の満足度調査データを用いて,LRTに対する利用者の重要視するサービス要因とその水準を明らかにした.また熊本市と広島市のデータを比較して,LRTに対する主観的価値の地域間安定性について検討するとともに,広島市の2時点のデータを比較して,同じく時点間安定性について検討した.
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