本年度の成果は以下の通りである。 (1)海面上昇シナリオの設定 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書を参考にして、伊勢湾地域(愛知県・岐阜県・三重県)における海面上昇シナリオを「2100年までに1m上昇する」と設定した。そして、CIS(地理情報システム)を用いて、当該シナリオに基づく伊勢湾地域における水没地域分布図を作成した。 (2)市場財の経済評価 前年度に構築した社会経済モデルの問題点を修正し、海面上昇1mによる土地損失に伴って発生する経済損失を応用一般均衡分析の枠組みで評価した。この成果の一部を裏面に示す論文「海面上昇による土地損失と波及被害の計測」および「伊勢湾地域における海面上昇による経済損失の計測」にまとめた。 (3)非市場財の経済評価 前年度のアンケート調査で収集した553件の表明選好データを用いて、沿岸環境の経済価値をCVM(仮想市場評価法)とコンジョイント分析の枠組みで評価した。この成果の一部を裏面に示す論文「支払手段の違いによる支払意思額の変化」および「CVMにおける支払単位の違いによるWTPの変化」にまとめた。 (4)海面上昇に対する環境脆弱性指標地図の作成 GISを用いて、以上の成果を地図上に表示した。具体的には、海面上昇1mによって海面下となる地域の土地利用別直接被害分布図および産業別直接被害分布図、また海面上昇1mによる産業別波及被害分布図などを作成した。 (5)沿岸域管理への提言 (4)で作成した環境脆弱性指標地図に基づいて、伊勢湾地域における沿岸域管理(特に海面上昇への適応策)について考察した。
|