ハイドロタルサイト様化合物は、水酸化マグネシウムのブルーサイト型構造を基本とする層状化合物で、天然にも存在するが合成も比較的容易であり、基本層ならびに層間に様々な元素が使用できる。層間の陰イオンは交換可能であるために、無機化合物の中では数少ない陰イオン交換体であるが、イオン交換能以外にも、表面がプラスに荷電していることや、Mg^<2+>の溶出に伴ってOH^-層が形成されるなど水処理材として興味深いいくつかの特徴を持っている。しかしながら、各種陰イオンなどの除去と、ハイドロタルサイト様化合物の組成(あるいは安定性)との関係やその機構などについては充分な検討を行なうまでに至っていない。そこで本研究においては組成の異なる種々の無機陰イオン交換体について、それらのもつ機能やこれらの機能に影響を及ぼす因子を一覧するとともに、この化合物の表面近傍での物理的、化学的な特性を明確にしたいと考えた。本年は、昨年度の結果を基に、特に近年除去方法が模索されているフッ素について、実用化を念頭においた検討を行った。カルシウムとアルミニウムを構成元素とするものはフッ素の除去に適することが明らかとなったっていたので、フッ酸を含む鉄鋼系の排水に適用した。ハイドロタルサイト様化合物を添加後にpHを中性付近に調整することにより、処理水中のフッ素濃度を8mg/l以下にまで低減させることが可能であった。 また、表面が強アルカリ性となることを利用した殺菌効果の発現についても検討を継続している。培養法によらない手法による検討から、アルカリ溶液の場合には塩素とは明らかに異なる殺菌機構で殺菌が進行していることが示唆されている。
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