研究課題
基盤研究(C)
たいていの盆地は、山々に囲まれた高地あるいは低地に位置し、かなりの量の地域用、農業用、工業用、都市用水を地下水に依存している。地下水の涵養域や流動経路を知っておくことが政策上、水資源管理や地下水汚染の防止に重要になってくる。私たちは、地下水の酸素および水素の安定同位体比と水質を測定し、松本盆地および大阪盆地の涵養域と流動経路を同定した。松本盆地では、安定同位体データは全て天水線に沿って広く分布した。酸素および水素の安定同位体比と水質の空間分布、酸素の安定同位体比に現れた高度効果を総合して考えると、流域には浅層地下水系と深層地下水系があり、5つの涵養域と7つの流動経路が識別される。その内の浅層および深層地下水系の4つの流動経路は河川に沿っている。沖積層で覆われた2つの推定断層を経由する経路が酸素および水素の低い安定同位体比から推定される。推定断層を経由して深層へ向かう経路が、深層と浅層の地下水の水質組成と同位体データを比較することから推定される。WHOの基準を一部超える3つの汚染源からの硝酸は、浅層および深層地下水系の両方に対し、都市部に向かって地下水の流動経路に沿って移動しながら広がっている。3年間の硝酸濃度のモニターによると、浅層地下水系ではほぼ一定の濃度で推移しているのに対し、深層地下水系では増加している。流動経路の1つが流動バリアとして働き、盆地の地下水系を閉鎖性にしている。一方、大阪盆地では、たいていの安定同位体データは天水線に沿っているが、一部は、天水線よりも傾きが緩い線に乗っており、酸素の安定同位体比が-7.1‰より大きい。涵養域の水の酸素の安定同位体比は高度効果を示し、-7.1‰より小さい。酸素の安定同位体比が-7.1‰より大きい異常な地下水は深層でも浅層でも盆地の中に多く点在している。それらは、大きな揚水量の井戸に一致している。酸素および水素の安定同位体比と塩素イオン濃度の空間分布、酸素の安定同位体比に現れた高度効果を総合して考えると、次のようなことが暗示される。すなわち、盆地内の地下水は、涵養域からの淡水と海水が混合して形成されたものであり、上町台地が流動バリアとなって盆地の東部地域の地下水系を閉鎖性にしている。
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すべて 雑誌論文 (11件)
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