河川流下過程で、堰上流部やダム貯水池などのように流速が遅い水域では藻類増殖が生じるが、流速が速いと藻類増殖が抑制され濃度減少する事実が認められている。しかしながら、増殖が抑制されるメカニズムに関しては不明である。抑制メカニズムに関しては、様々な要因が関係していると考えられるが、本研究では流動に伴う水の鉛直混合によって藻類も水とともに鉛直混合することにより、水面を流れる場合に比べて、藻類が利用可能な光量子量の減少が生じることと、ならびに、光量子量〜光合成量の関係が比例的でないこととが関係していることに着目して検討を加えた。加えて、大型植物では明らかにされている平均光量子量は同じであっても、光量子量の変動周期が異なると光合成量に及ぼす影響が異なるという事実が、植物プランクトンにおいても成立するかどうかに関しても検討を加えた。 ここでは、平均光量子量は同じにして光量子を周期的に変動させた環境下で、Microcystis aeruginosaを用いて培養実験を行い、変動周期によって増殖速度が異なるかどうかに関して検討した。採用した変動周期は、流下過程で藻類濃度の現象が認められている河川等の比較的水深の浅い系での鉛直混合を想定しているので、1.2秒〜7.6秒とした。 これらの変動周期の範囲内では、変動する光量子量の瞬間値に対する光合成量の時間積分値により、変動する光量子下での光合成量の概略値を推定しうることが示された。変動周期の増殖速度に対する影響はさほど大きいものでは無かったが、実験した変動周期の範囲内では、変動周期が長くなるにつれてやや増殖速度が遅くなる傾向も認められた。なお、この様な傾向は大型植物で認められている傾向と矛盾しないものであった。なお、河川水質と光量子の消散係数についても検討を加えた。
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