研究概要 |
コロイドによる汚染土壌の浄化法について検討するためには,化学物質のキャリアーとなるコロイド相(土壌コロイド,溶存有機物)が,どのように土壌内を移動するのかを明らかにする必要がある.本研究では,表層土壌やmacroporeを含む不撹乱土壌を用いた土壌カラム実験を行い,以下のような結果を得た. (1)コロイド相を無機性コロイド粒子,有機性コロイド粒子,溶存有機物の3つのフラクションに分画し比較した結果,各フラクションの流出挙動は異なることがわかった. (2)土壌コロイド相の生成においては拡散が律速となっていることが明らかとなり,拡散律速のコロイド生成と移動を記述するモデル(equivalent macropore model)を提案した. (3)三次元励起蛍光スペクトル測定により,土壌から流出する溶存有機物はフミン酸またはフルボ酸である可能性が高いことが示された. (4)1年分の降水により土壊から流出するコロイド粒子および溶存有機物の量は,土壌中の含有量のそれぞれ,約0.8%,約0.1%と極めて少なく,表層土壌からはコロイド相がほぼ恒久的に供給される可能性を確認した. (5)コロイド相の流出を統一的に評価するための指標としてColloidal-phase Release Velocity(CRV)を提案した.このCRVによりコロイド相の流出挙動と流出量の情報を同時に得ることができる. (6)コロイド相による化学物質輸送促進について,コロイド相を考慮した三相モデルによる予測結果では,コロイド相によるPAH(Benzo(a)pyrene)輸送量は,溶存態としての輸送量の約4倍となることがわかった.
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