研究概要 |
コロイドによる汚染土壌の浄化法について検討するためには,化学物質のキャリアーとなるコロイド相(土壌コロイド,溶存有機物)が,どのように土壌内を移動するのかを明らかにする必要がある. 本年度の研究では,コロイドの流出特性と土壌通過特性を調べるため,黒ボク土と砂を用いた土壌カラム実験を行った.土壌は福島県黒ボク土と豊浦砂を用い,土壌カラムに供給するコロイド溶液は福島黒ボク土から人工雨水により抽出した.供給雨量は20mm/hrで,13時間ごと3回の降雨とした.測定項目はpH,EC,コロイド粒子(濁度),全溶存有機炭素(DOC),真の溶存有機炭素(RDOC)などである.土壌カラムはそれぞれ2本づつ作成しduplicateとした.得られた結果は以下の通りである (1)コロイド相の流出特性については以下のことが明らかとなった. 福島黒ボク土では,全コロイド粒子の流出は時間とともに増加する.DOCの流出は時間とともに減少し,その85〜95%がRDOCである.豊浦砂においては全コロイド粒子の流出は時間とともに減少し,流出濃度は黒ボク土に比べて微量である.DOCの流出濃度も低く,黒ボク土に比べておよそ1/4であり,RDOCの流出はほとんど見られなかった. (2)コロイド相の通過特性については以下のことが明らかとなった. 福島黒ボク土,豊浦砂のいずれにおいても供給したコロイド粒子の70〜90%が土壌あるいは砂にそれぞれ吸着あるいは捕捉される.したがって流出率は10〜30%となる. 溶存有機物の流出に関しては,黒ボク土においては流出する有機物の主成分はRDOCであり,有機性コロイドは微量である.豊浦砂においては,RDOCの流出はほとんどなく,流出有機物の主成分は有機性コロイドである.
|