研究概要 |
コロイドによる汚染土壌浄化の可能性を検討するためには,化学物質のキャリアーとなるコロイド相(1μm以下,土壌コロイド,溶存有機物)の土壌内挙動と通過特性を明らかにする必要がある.本研究では不撹乱および撹乱土壌を用いたカラム実験およびバッチ実験を行い,以下のような結果を得た. (1)コロイド相の流出特性 コロイド相を無機コロイド粒子,有機コロイド粒子,溶存有機物の3つのフラクションに分画すると,各フラクションの流出挙動は異なることがわかった.土壌コロイド相の生成は拡散が律速となっていることが明らかとなり,拡散律速のコロイド生成と移動を記述するモデルを提案した.また,コロイド相の流出挙動と流出量を評価するための指標としてColloidal-phase Release Velocity(CRV)を提案した.リン含有量の高い土壌からのリン流出は溶存リンが約80%であった.溶存リンと溶存有機物との相関が高いことから,リンが溶存有機物と何らかの複合体となっている可能性が示唆された. (2)コロイド相の通過特性 火山灰土と豊浦砂におけるコロイドの通過率はそれぞれ,およそ100%,30%であった.溶存有機物の通過率はいずれにおいても40〜50%であり,砂の場合にはその主成分は有機コロイドであった. (3)コロイドのトランスポートパラメタ 不撹乱土壌においてトレーサー(臭素イオン)とコロイドのトランスポートパラメタ(流速,分散係数)を測定した結果,コロイドの流速はトレーサーに比べ3〜4倍大きいことが明らかとなった(マクロポアの影響).土壌の周りの付着水と間隙内の流動水との間のコロイドの物質移動係数は,トレーサーに比べ小さく,土壌浄化法においては律速となる可能性があることがわかった. 以上の結果から,コロイドによる土壌浄化法は砂などの構造性が低く,マクロポアの少ない土壌で可能性があることが示唆された.今後さらに汚染物質の吸着性などについての検討が必要である.
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