本研究では、国土数値情報を活用し簡便にかつより正確に全国レベルでの広域地震動マップを作成する手法を構築することを目的としている。今年度の成果としては、1)近年の地震記録を含む最新の地震動データベースに基づいて、震源の深さによる距離減衰特性の違いを検討した。その結果、震源深さが30kmよりも大きい地震の場合には距離による減衰の傾きが従来の距離減衰式で用いられている値よりも明らかに大きく、これがモホ面での地震波の反射・屈折の影響で説明できることを示した。これらの結果を考慮して、やや深い地震にも適用可能な最大加速度・最大速度の距離減衰式を作成した。また、この距離減衰式の精度についても検討した。2)地盤の非線形性が地盤増幅度に及ぼす影響を評価するために、2001年芸予地震の本震および余震等による広島市での地震記録から最大振幅に対する増幅度を地盤のひずみレベルごとに整理し、これに1989年ロマプリータ地震および1994年ノースリッジ地震における強震記録からの結果を加えて検討した。その結果、最大加速度に対する増幅度は、表層地盤の有効ひずみが3X10^-<4>程度を越えると顕著に低下するが、最大速度に対する増幅度は、有効ひずみが1×10^<-3>程度までは地盤の非線形性の影響がほとんどみられないことを確認した。これらの成果を踏まえて、来年度は、より高精度な地盤の増幅特性評価式を提案し、これと国土数値情報を用いて、全国を網羅した地盤増幅度マップを作成する。さらに地盤増幅度マップと地震動強さの距離減衰式を用いて高精度の広域地震動マップを作成する予定である。
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