研究概要 |
人間の動作時に発生する床振動は、居住性の観点から重要な性能のひとつである。研究代表者らは、これまでに、床振動を居住者が足部,臀部などでの触覚を介して直接感じる場合を対象とした研究を行い、妥当な評価方法を確立した。さらに、確立した評価方法を実在住宅床に適用し、床振動と苦情発生の有無との関係に関するデータを蓄積したが、その結果、床振動は十分小さいにもかかわらず、人間の動作時に発生する建具,家具,食器などのがたつき音なとが床振動を認知するきっかけとなり、振動に対する意識が高まり苦情につながった事例が多数見受けられた。すなわち、聴覚的要因が床振動の評価に大きく関与しており、かつ触覚のみの場合より小さなレベルの振動制御が要求されることが示唆された。本研究は、このような背景から、建具,家具,食器なとのがたつき音の影響を含む床振動の評価指標を提示したものである。本研究の成果をまとめると、以下の通りである。 ・床振動に対する判断には、がたつき音の有無,大きさが影響する。がたつき音の影響は、床振動が小さい範囲で大きいことから、実際の日常生活では、閾値に近い床振動の認知などにがたつき音が大きく影響し、苦情なとのきっかけとなる可能性が高いことが想定できる。 ・床振動の感覚上の大きさや、床振動に対する評価を表す物理量として、研究代表者らが開発した床振動測定装置を用いて測定,算出されるVI(1), VI(2)を設定し、妥当性を確認した。 ・がたつき音の感覚上の大きさや、がたつき音に対する評価を表す物理量として、人間の動作時に発生するがたつき音のオールパスでの音圧レベル(周波数特性:A,動特性:FAST)の最大値Lmaxを設定し、妥当性を確認した。 ・VI(2), VI(2)とLmaxdを用いた、がたつき音の影響を含む床振動の評価指・標を提示した。
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