鉄筋コンクリート造建物を対象として、強震地震動が入力する際に建物の弾塑性応答履歴によって消費されるエネルギー、建物に入力するエネルギー等のエネルギー量と建物に励起される弾塑性応答との相関を、建物をモデル化した振動系を用いたシミュレーション解析によって考察する。対象とする建物は、中・高層の多層建物を想定する。地震時水平力に対する崩壊メカニズムが望ましい形とされるはり曲げ降伏先行形とし、変形が規約されることから1自由度系モデルを検討対象モデルとする。応答スペクトルによる動的特性を同一とする各10例の模擬地震動波形アンサンブルを2種類(短周期成分卓越と長周期成分卓越の2種)の計20波形作成し、入力地震動として用いる。 建物周期を02、0.4、0.8秒となる3種の建物を設定し、弾塑性応答が塑性率で15、3、5となる塑性化度合いの地震応答となる入力レベルに対し、系の弾塑性履歴(復元力)機構によって消費されるエネルギー、減衰機構によって消費されるエネルギー、慣性力項によって消費されるエネルギー、ならびにそれらの総和として求められる入力総エネルギーを算出し、各エネルギー量と系に励起される弾塑性応答の相関性に検討を加えた。エネルギーと最大応答値の2量に回帰分析を行い、相関係数により2量の間の相関に定量評価を行った。 本年度の成果の概要は以下の点にまとめられる。 1.系で消費されるエネルギーと弾塑性応答の間には、入力地震動の特性が影響因子となり、短・長周期卓越型の模擬地震動アンサンブルに対して定性的に異なった傾向が認められた。 2.設定した塑性応答レベルに応じた消費エネルギーのばらつきの変動係数を評価尺度とすると、消費エネルギーと弾塑性応答変形の相関は、塑性変形に直接関係する履歴消費エネルギーより総消費エネルギー(総入力エネルギー)とより高い相関を有する結果が認められた。
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