鉄筋コンクリート造建物を対象として、強震地動入力時に励起される弾塑性応答と地震時応答によって建物応答で消費されるエネルギーの相関を応答シミュレーションによって解析し、建物が過大な地震入力を受ける際、弾塑性応答が励起されて倒壊・崩壊に至る過程を検討する。建物に曲げ降伏、せん断破壊等の損傷が形成され、倒壊・崩壊に至る条件を応答変形で規定する。本研究では、建物が倒壊・崩壊に至る終局の状態を、応答が定められた応答塑性率に到達するものとして定める。 入力地震動としては、我が国の超高層建物等の耐震性能を検証する時に用いられる"極めて稀に生じる"とされる地震動アンサンブルとし、これに2種の立地地盤種別を設定した。建物の弾塑性応答と消費されるエネルギーとの相関を統計的に考察するため、定められるスペクトル特性を有する模擬地震動波形20例のアンサンブルを作成し、解析に用いた。消費されるエネルギーとしては、応答が倒壊・崩壊に至るクリティカル応答を生じるまでの時間内に消費される総エネルギー、復元力機構によるエネルギーならびに最大応答を更新する履歴によるエネルギーを取りあげ、評価量とした。 本年度の成果の概要は、以下の点にまとめられる。 (1)系の履歴によって消費されるエネルギーと系に励起される弾塑性応答の間には、相関性が認められる。 (2)最も弾塑性応答と関連が強い応答を更新する履歴での消費エネルギーと最大弾塑性応答の相関は高く、次に系で消費される総エネルギーと最大弾塑性応答の相関が高い結果が得られた。 (3)倒壊・崩壊に至るとする応答が励起される地震動継続時間は、波形ならびに系に設定する破壊形式によってばらつきを有し、統計的に有意な評価結果は得られなかった。 (4)建物系の周期、建物の終局時崩壊形式による評価のばらつきには、ある傾向が認められるが、定量的な評価については結果を得られず、継続検討事項とされた。
|