研究概要 |
近年,地震発生に伴った液状化による建築物の被害事例が多く報告されるようになってきた.これは,人口埋め立て盤や沿岸地域に建築物が建設されている現状を反映している.すなわち,地震時に液状化する地盤あるいは液状化に至らないまでも有効応力が減少する地盤内での杭基礎の水平地盤反力を適切に評価できる事が,実務的課題となっている.また,建物を支持する杭基礎は複数本であることが多く,群杭としての評価も考慮しなければならない.これらの要求に答えるために,本研究では浸透圧により有効応力を制御した砂地盤状態を作り出すことができる実験装置を用いて液状化の程度(有効応力の減少)に応じた群杭の水平地盤反力を求める研究を行っている.本研究は平成14年度から平成16年度の3年間にわたるもので,昨年度は,単杭,2本直列杭,2本並列杭および4本杭について,地盤内有応力,載荷速度,杭間隔などの影響を調べる研究を行った. 本年度は,杭間隔3.OBと5.OB(B:杭直径)の4本杭および同じ間隔で4本群杭の対角線交点に杭(中央杭と呼称)を配した5本群杭の比較実験を実施した.なお,これらの実験結果の持つ物理的な意味を把握するため,最小二乗近似法による杭頭荷重〜水平変位量関係の2次双曲線関数近似から,初期勾配による初期抵抗剛性と極値である最大杭頭せん断力に関する解析をも行った.これらの研究から得られた知見は,以下に示すごとくである. 1.群杭一地盤系が示す初期抵抗剛性および最大杭頭せん断力は,昨年度の単杭の結果と同じ性状を示し,有効応力が低下するほど低下し,その低下する割合は有効応力にほぼ比例している.また,この性状は4本群杭およぴ5本群杭のいずれにおいても認められる. 2.群杭の初期抵抗剛性に関する詳細として,杭間隔の変化および杭が群杭中で占める位置の影響度は,それ程大きくないことが指摘できる. 3.群杭の最大杭頭せん断力に関する詳細として,杭間隔の変化による影響は初期抵抗剛性と同じようにそれ程顕著でないが,群杭中の杭の位置による影響は大きく,具体的には単杭の前方杭列と後方杭列と中央杭の2グループに大別でき,後者の最大杭頭せん断力は前者のそれの約50%程度となることが,判明した. 4.杭が地盤から受ける水平地盤反力の深さ方向分布は,前方杭は単杭より若千大きな分布値を示すが,後方杭はかなり小さな分布値を示す結果が得れた.
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