研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、1)高強度鉄筋コンクリート部材の横拘束材として鋼管を用いる方法を提案すること、2)鋼管で拘束された柱を用いた骨組み構造の繰り返し履歴性状を実験的に調べ、提案方法の有効性を実証すること、3)柱材における鋼管の肉厚や軸力の大きさなどが骨組みの繰り返し性状に及ぼす影響に関する基礎データを取得すること、4)柱材における鋼管の拘束効果を考慮できる、骨組みの破壊形式や終局耐力を予測できる設計方法を開発すること、の4点である。そのために、圧縮強度80MPa級の高強度コンクリートを用いた骨組み試験体を6体について、一定軸力下における繰り返し載荷実験を行った。それらの骨組みの柱には通常の帯筋の代わりに、鋼板を高強度コンクリートの横拘束材として用いた。本実験の結果から以下の結論が得られた。1)柱を鋼管で拘束すれば、80MPa級の高強度コンクリート骨組みは高い軸力を受けても十分な耐震性能を期待できる、2)正方形鋼管の内部をさらにうちスチフナーで補強すれば、鋼管の拘束効果を箸しく向上させることができ、軸力比0.5と非常に高い軸力を受ける骨組みは、うちスチフナーで補強した薄肉鋼管(幅厚比87)による拘束効果が、無補強厚肉鋼管(幅厚比35)による拘束効果とほぼ同等である。前者の鋼材用量は後者の約半分程度にしかないことを加味すると、内スチフナーの経済的効果が極めて大きいことが分かる。また、実験研究を行うと同時に、拘束骨組み構造の全体耐震性能を評価するための有限梁要素を新たに提案してから、設計者に使いやすい、骨組み構造の終局耐力と変形を簡便に求めるための式を提案した。実験結果との比較により、本報告で提案した梁要素を用いれば、コンクリート骨組み構造の能力曲線は大変位まで精度よく追跡できることと、提案した略算方法を利用すれば、骨組みの最大耐力とそのときの変形、および骨組みの破壊形式が精度よく予測できることなどが明らかになった。
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