昨年度は、接合部のアスペクト比、即ち、柱せいを一定とし、梁せいの変化が接合部の破壊性状、特に接合部終局耐力に与える影響を実験的に考察した。結果は、アスペクト比「1.0」の基準試験体を、即往のアスペクト比1.0近傍の実験データに基づく接合部強度式を用いて設計した結果、同試験体は接合部破壊を生じた。基準試験体と同じ梁主筋量を配筋したアスペクト比の大きい試験体においても、接合部破壊となった。また、アスペクト比が大きくなるに従って、接合部破壊時の接合部せん断力の値が減少する傾向が見られた。 本年度は、前述の実験結果を分析し、接合部せん断抵抗機構の作成を試み、アスペクト比の変化に伴う、接合部の耐力について理論的に考察した。結果として以下のような知見が得られた。 1.接合部で破壊したアスペクト比の大きい試験体の最大耐力は、既往の接合部終局強度式で求めた値との対応は見られなかったが、接合部を柱の一部として見なし、柱のせん断終局強度式を適用し評価できることが得られた。そこで、更に、既往の173体の試験体についても同様のことを試み、接合部終局強度算出に、柱のせん断終局強度式が適用できることを確認した。 2.三次元弾塑性有限要素法による解析結果から、接合部圧縮ストラットの形成及びその圧縮応力度の大きさの検討の結果、接合部アスペクト比の影響を定性的に把握することができ、柱のせん断終局強度式との対応が確認できた。接合部アスペクト比が大きくなると、接合部せん断入力量は、アスペクト比が1.0の試験体と同様でも、接合部圧縮ストラットの応力度は大きくなるという知見を得た。
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