本研究は、梁・柱接合部の形状因子で、設計上、基本的に把握しておくべき接合部アスペクト比(梁せい/柱せい)の接合部の力学的挙動への影響、特に接合部終局耐力への影響について検討したものである。接合部アスペクト比(0.6〜2.0)を実験変数とした接合部破壊する試験体を作成し、実験を行い、接合部耐力について実験的、理論的考察をした。又、実験結果の検討のために3次元有限要素法弾塑性解析と既往の実験データの統計解析も行った。結論として以下のような知見が得られた。 1 既往の提案された破壊モード分類法では、アスペクト比の大きい場合に適用できない。 2 アスペクト比が大きくなると現行の設計式では、接合部耐力を正しく評価できないが、接合部を応力状態の類似性から柱の一部として見なし、接合部の耐力算定に柱せん断終局強度式を用いると、実験結果と良い対応が見られた。 3 アスペクト比が大きい場合についても、接合部圧縮ストラットの実験結果を用いての考察から、接合部終局強度の主な抵抗機構は、ストラット機構であることが予測できる。 4 既往実験資料の接合部耐力について、接合部耐力算定に柱せん断終局強度式を用いると、良い対応が見られる。 5 層間変位については、梁と柱変形に剛性低下率の式、接合部変形に実測値を用いた場合に良い対応が見られた。 6 3次元弾塑性有限要素法解析から、アスペクト比が大きくなると、接合部せん断入力量は同じでも、接合部圧縮ストラットの圧縮主応力度や、接合部せん断変形は大きくなることがわかった。
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