研究概要 |
上部構造と基礎構造を一体化した建築構造システムの構造健全性を振動モニタリングにより維持する方法を構築することを目標に,理論・実験・実測の3本の柱を立てて研究を行った。 理論:建築物の上部構造の損傷検出法を上部・基礎一体構造の損傷検出法に拡張発展させるための理論的フレーム構築の一環として,立体トラス屋根構造物の部材,接合部,および支持部の損傷を同時に検出することのできる方法を開発し,その有効性を振動模型実験により確認した。 実験:次年度の本実験に備えて,地盤と構造物の相互作用を考慮した建物振動模型の設計と製作を行った。年度の前半で模型設計を終了し,後半を模型製作時期にあてた。建物模型は杭基礎を有する多層建築物を考え,杭周辺の地盤材料としてシリコン材を用いた。予備実験では基礎構造の損傷のみを対象とし,杭頭および杭中央部に大きさの異なる切欠きをいれて損傷を模擬した。予備振動実験を行い,従来の加速度センサを用いた計測により,杭周辺にシリコン材がある場合とない場合ともに,損傷前後で振動特性に変化が生じることを確認した。また,新たに導入した高速撮影ビデオにより,上部構造と杭の変形を計測できることを確認した。 実測:杭基礎RC造中低層建物を実測対象に選び,常時微動測定を行った。常時微動測定には,研究室所有の6チャンネル同時計測可能なポータブルタイプを用いた。建物の鉛直方向と水平方向,さらに建物周辺の地表面上の水平方向の振動計測を行った。計測した時系列データからオフライン処理により建物のねじれ変形やスウェイ・ロッキングの相互作用成分をそれぞれ分離し,地盤特性と構造特性により各成分の寄与がどのように変化するのかを検討した。また,基礎構造の損傷を検出するための地盤-構造物連成系多質点系モデルを構築し,上部構造,地盤,および相互作用に関するばね剛性と減衰を同定し,最後に杭のばね剛性と減衰を同定する方法を開発した。
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