本年度は、研究計画に基づいて下記の研究を行った。 1)平鋼を挿入した膨張コンクリート充填鋼管材の膨張特性に関する研究 昨年度までの実験の結果をまとめ、平鋼を挿入した膨張コンクリート充填鋼管材の拘束鋼管降伏時のコンクリート膨張圧の評価方法を提示した。 2)低添加膨張材を用いたコンクリート充填鋼管材の膨張特性と引張特性に関する研究 今年度の実験の結果から、以下の知見を得た。 (1)拘束鋼管を降伏させるほどの膨張圧を得るために必要な膨張材量は、低添加膨張材を使用することで、膨張材置換率を30%以下、すなわち従来の膨張材量の約半分程度にすることができる。 (2)ブレース中央部の断面において、平鋼から遠く離れた鋼管側面付近で発生していると思われるコンクリートの亀裂は局所的なものであり、ブレース全体の引張性能に与える影響は小さい。 3)膨張コンクリート充填鋼管材の圧縮・引張繰り返し加力実験に関する研究 昨年度と今年度の実験の結果から、以下の知見を得た。 (1)圧縮荷重時において、鋼管は常に弾性挙動する。 (2)400kN以下の繰り返し荷重時においては、平鋼、鋼管及びコンクリートはほぼ弾性(的な)挙動をし、残留歪や残留応力度も小さい。 (3)コンクリート軸応力度-歪曲線の履歴法則は、最大点指向型をとる。 (4)本鋼管ブレース材は、圧縮・引張繰り返し加力を受けても、圧縮荷重時においては、ほとんど剛性低下しない。一方、引張荷重時においては、想定した中小地震動レベルでは、90%以上の初期剛性を有し、大地震動レベルでも、80%程度の初期剛性を有する。
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