ケイ酸カルシウム板(旭硝子製、ミュージライト)を2枚圧着して作成した二層壁試料を用いて、結露・再蒸発過程におけるその内部含水率の変動を実験測定を行った。また計算モデルを提案し実験結果に対して数値解析を行った。同種の材料で構成された二層壁体に対する内含水率変動を解析することにより、内部の熱水分移動に対する圧着境界面の影響が明らかにされると考える。 これまでに筆者等は同様の測定実験を行ってきているが、実験の困難さのため十分なデータが得られていない。本研究では、より多くの測定データを蓄積することにより信頼性を高いデータを収集している。 合計厚さを30mmとし各層の厚さが異なる試料を4種類用意し、試料の側面および底面を断湿し、側面を断熱した。試料の載った銅板全体を恒温恒湿室に設置し試料底面を水で冷却し室内空気の温湿度をある条件に設定した。試料が室内側表面から吸湿し平均含水率が定常状態になった後、室内空気の湿度を下げて試料内の水分を放湿した。これら過程中、試料の材料の重量を逐次測定しまた随時試料を切断し断片の重量を測定して、試料の乾燥重量から平均水率分布および含水率分布が得られた。結露過程の初期において平均含水率の変動に対する境界面の影響が大きく、含水率分布はそれぞれの層内では分布差が少ないが壁体全体としては二極分化する傾向があることなど、二層壁体中の含水率変動特性が把握された。 実験結果の情報を元に、境界面において熱・水分移動に対する伝達抵抗および水分拡散係数に対する抵抗を考慮した2種類の水分移動計算モデルを提案し数値解析を行った。熱・水分移動に対する伝達抵抗を考慮したモデルによる計算結果は、平均含水率について非常によく実験結果と合致しているが、含水率分布に関しては極端な二極化を示し、実験結果のような適度な分布が得られなかった。水分拡散係数に対する抵抗を考慮したモデルによる計算結果は、平均含水率についてはおおむね実験結果と合致したが、再蒸発過程においては境界面の位置による違いの影響が大きく現れる。含水率分布に関しては実験結果とよく合致した。 今後、実験のさらなる分析をすすめ、あらたな計算モデルの提案をすることが課題である。
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