本研究では「音源」と「評価尺度」に着目し、「音源」については在来鉄道騒音と新幹線騒音に関する社会調査を実施し、「評価尺度」については基礎評価語の影響に関する社会調査を実施した。 2002年度は福岡県の4つの在来線鉄道に面する戸建住宅を対象として、基礎評価語の影響に関する社会調査を実施した。アンケート票は、ICBENのTeam6が提案した標準質問文の日本語版である「悩まされる、あるいは、じゃまされる、うるさい」と、「不快」、「うるさい」、「悩まされる」の4種類の基礎評価語に応じて4種類用意し、各路線に沿って立ち並ぶ住宅に順番に割り当てた。回答選択肢には5段階の言語尺度(まったく、それほど、多少、だいぶ、非常に)と11段階の数値尺度(0〜10)を併用した。以上により得られた住民反応と騒音暴露量の関係を、鉄道騒音の一般的不快感に関して分析した結果、4種類の基礎評価語間に系統的な差は認められなかった。本研究で扱った基礎評価語および分析精度の範囲において、質問文の基礎評価語が異なっても回答選択肢の尺度が同じであれば、異なる社会調査間での成果の比較が可能であることが示唆された。 2003年度は小倉・博多間の山陽新幹線沿線住民を対象に社会調査を実施した。アンケートの質問文および回答選択肢は、ICBENの標準質問文の日本語訳および共通尺度とした。以上により得られた住民反応と騒音暴露量の関係を分析した結果、線路に近い住民の不快感反応は遠距離の住民に比べて高く、住宅や什器、建具の振動に対する不快感も高いことが分かった。また、高架や盛り土といった線路構造や、植樹帯の有無についても住民反応とある程度の関連性があることが分かった。一方、2002年度に実施した在来線鉄道の調査結果と比較した結果、騒音の不快感および住宅振動の不快感に関して、新幹線に対する住民反応が有意に高いという結果が得られた。
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