研究概要 |
平成14年度に引き続き、標準SAT計を作成し八王子地区における気象観測を続行した。また、高層気象台における気象観測データも入手し、それぞれの特性と相関について分析を進め、前年までに得られた特性に対する相違点などの知見を得た。 次に、この推定式の実用性をより広い地域で検証するため、東京都八王子市(工学院大学八王子校舎)と岩手県の沿岸部(下閉伊郡山田町)において短〜中期間の実測を行い推定式の精度を明らかにし、自然エネルギー利用のための大気放射量マップを作成した。結果として、日本における大気放射量の傾向は南方ほどその直は大きくなり、さらに海抜の影響を受けている可能性が示された。 さらに今年度は、これまで提案してきた大気放射星,夜間放射量推定式の実用上の有効性を検討することを目的として、新たな自然エネルギー利用として注目されている屋上緑化による環境改善効果の検証にこれらの推定式を用いた。この検証では、特定の建物の屋上表面における放射収支量を実測値と推定値から算定し、両者を比較することで推定式の精度検証と実用上の問題を抽出した。また、空気調和の熱負荷計算における大気放射量や夜間放射量の影響について、実測値とシミュレーションによる値を比較することで空調負荷からの分析を行い、屋上緑化による屋上放射環境の改善効果と室内環境の改善効果について検証を行った。 これらの結果は大気放射量,夜間放射量の推定が自然エネルギー利用システムの検討に対して有効であるということを示すものであり、特定建物の表面における放射熱収支のみならず地表面においても適用できる定式であるということをシミュレーションによらず実測によって明らかにしたという点において貴重な知見であるといえる。
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