研究課題/領域番号 |
14550600
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小野田 泰明 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (00185654)
|
研究分担者 |
坂口 大洋 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (70282118)
有川 智 国土交通省, 国土技術政策総合研究所, 主任研究員 (00212639)
菅野 實 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10005366)
|
キーワード | 外部性 / 舞台芸術施設 / 中山間地域 / コミュニケーション / ライフヒストリー / 岩手県湯田町 / 社会関係資本 |
研究概要 |
前年度は低成長社会において鍵となる「経済の外部性」の概念とそれを実際に産出していると考えられる第三世代型の舞台芸術施設の特徴についてスタディしたが、今年度は具体的なフィールドにおいてその検証を行った。施設の影響が把握しやすい、生活圏の独立性が高く、比較的単純な構成をもつ中山間地の中から「ゆだ文化創造館」を有する「岩手県湯田町」をフィールドとすることとした。 調査は、町全体での施設の受容状況を探るアンケートと、個々人の内面の変化を探るヒアリングの二段階で行った。前者は、町内を主な生活圏とする二世代、中学生(全中学生108名)と、高齢者(老人クラブから60名を任意抽出)を対象に、後者は前述二層に主婦、旅館経営者を加えた内から29名を抽出して行った。中学生は演劇を自らの生活世界の延長として捉えている一方、高齢者は日常生活が多様化する切掛けとして捕らえているなど世代によって性質は異なるものの、施設の存在によって実際に生活が変容しているようである。さらに施設事業が、集落間のコミュニケーションの契機としても認識されており、広域コミュニティ形成に寄与している様相を把握した。 さらに個別インタビューから、演劇に対する意識の向上、ホールを拠点とする他地区との交流といった直接的な効果が、家庭や教育などと他の契機と関わりつつ時間をかけて個々人の中で熟成され、二次的な効果(活動圏の拡張、自己の再確認、進路選択の拡張)に発展する例が確認されるなど、ライフヒストリーの中で、相発的変化がおこっていることも明らかになった。 これらの出方はひとそれぞれに違うが、相互コミュニケーションのポテンシャルをあげている点では共通しており、生活全般に影響が及んでいる。本調査によって、パットナムらが指摘するような社会関係資本が創出されることが、舞台芸術施設による外部性効果の主体であることが、一部確認されたと言える。(注:文中のアンケート・ヒアリング、個別インタビューは協力者の同意を得て行ったものである。)
|