用途転用は近年建築のコンバージョンとして、その動向が注目されているが、医療・福祉の分野でも同様と言えよう。ただ、他種類の施設と較べ、構造に関する基準のハードルが相当に高い。廊下幅や階段の蹴上げ高などの変更は改修工事では難しく、欧米での自由な転用と比較し、医療・福祉施設のコンバージョンの促進に障害となっている。既存施設を有効利用するには、コンバージョンは有力な手法であるが、基準上の緩和的な措置がなければ、わが国での普及は難しいと思われる。 一方、公的医療施設はコンバージョンの技術的な側面が解決されても、建設時の補助金の出所や目的などの縛りから、転用を難しくしている面もある。現在市町村合併が盛んに議論されている中、公的医療・福祉施設の余剰現象が必至である。既存資源の活用の面から、政策上のソフトな解決が待たれることが明らかになった。 しかし、病床数の規制や医療経済事情からの社会的要請から今後、病院の廃止が予想される。あるいは市町村合併によって隣接する公立病院の一部は閉鎖するような事態も充分に考えられる。こうした際に、既存建物を転用することが必要であろう。今回の調査では、わが国の場合はせいぜい上述した基準の問題から、長期療養型病棟であったり、高齢者ホームに転用される例が見られる程度である。しかし、ヨーロッパの例では、一般の住宅や集会施設などへの自由な転用も見られ、地域に医療・保健・福祉を中心としたサービスを行う、さまざま用途への転用が見られる。 コンバージョンは技術的には改修工事に過ぎず、それほど困難な問題ではない。むしろ、既存施設を改修し、新たな用途施設として地域の中で再生するプログラムの問題として捉えなければならない。
|