人間が空間を体験し、把握する際の視覚探索や歩行行動を明らかにするため、平成15年度は以下の研究を行った。 1.駅前市街地における探索歩行実験 商店が密集し、街路の構成が複雑なため道がわかりにくいと言われている駅前市街地で、被験者が感じたことや目に付いたサインなどを発話しながら、駅から区役所を探索する歩行実験を行った。実験中の発話や実験終了後のヒアリングなどから、分かりにくい場所、歩きにくい場所、目印となるランドマークなどを明らかにした。また、初めてこの地を訪れた被験者と頻繁に訪れている被験者が、実験後に描く地図の相違も明らかになった。 2.駅前市街地における仮設サインとアイカメラを用いた探索歩行実験 1.の実験結果を踏まえて、駅から区役所に至る経路を1つ選定した。そして、この地を初めて訪れた歩行者が道に迷わず区役所を訪れるために必要と思われる仮設サインを、選定した経路上に設置した。そして区役所を利用したことがない被験者が、アイカメラを装着し仮設サインを見ながら区役所を探索する実験を行った。その実験結果を詳細に分析した結果、駅前市街地における探索歩行時の注視対象や注視時間、仮設サインのデザインや設置場所による注視行動の違いなどを明らかにした。また、サインの地図に掲載されている情報のうち、交差点の形状や交差点間の距離は探索歩行の手がかりとして利用されにくいこと、地図に膨大な文字情報を盛り込んでも、現在地と目的地を含む数少ない情報しか利用されないことも明らかになった。
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