研究概要 |
平成14年度は,水害記録の調査と,地下空間を有する文教施設と地下街を調査対象にした防災意識調査と浸水被害調査を実施し,地下空間の浸水被害傾向とその対策への取組みをあきらかにした。 1)水害記録の調査:1970年〜2000年の新聞記事から豪雨や台風による水害情報を収集した。水害の場所などの基礎データ,避難行動,避難所など防災避難計画に関する研究データである。 2)防災意識調査: (1)文教施設調査:2002年8,9月に854博物館に郵送アンケートを実施し,452館(回収率は53%)から回答を得た。全施設平均の災害警戒度は火災,地震,水害の順だが,水害被害をうけた施設では火災,水害,地震の順となる。浸水対策はあまり行われず,被害後に対策を立てる傾向が強い。 (2)地下街調査:延べ面積150m^2をこえる全国の地下街67施設に対し,2002年10,11月に郵送アンケート調査を行った。44施設(回収率は65.7%)から回答を得た。浸水対策がある地下街は31施設(75%)だが,対策をしない13施設(25%)は,周辺で過去に水害が起きていない,十分な排水設備が整っている,雨水を処理する下水道が整備されているという理由をあげて,対策予定はないと答えている。水害事例がないと,浸水に対する危機感は希薄で,後追い的であるとみられる。 3)被害実態調査: (1)文教施設:集中豪雨の被害が約6割を占める。排水管の詰まり,河川の氾濫による被害が目立つ。 (2)地下街:44施設中9施設(20.5%)が,平均1.4回の浸水被害を受けている。被害を繰り返す例がある。浸水箇所は出入口が多く,地上階段出入口部分のかさ上げ不足が原因である。 東京渋谷では,出入口から地下街に浸水し,その下を走る地下鉄が止まる状態でも,避難誘導がなく,浸水の中を人々が通行する例があった。都市施設も人々の意識も無防備といえるであろう。
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