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外観保存は伝統的民家の保存において重要な手法のひとつであるが、近年のその問題点、とくに内部空間との関わりからの問題点が指摘されるようになってきた。本研究は重要的伝統的建造物群(以下「重伝建地区」とする)を中心に、伝統的民家の会館保存の事例を調査し、伝統的外観保存と内部空間整備の整合性に関する問題点を明らかにし、さらには復原的考証とその妥当性、内部空間利用のための外観改変の妥当性の検討など、今後の指針となるようなオーセンティックなプロセスを提案しようとするものである。本年度の作業は次の2点である。まず、全国の重伝建地区にたいしてアンケート調査を行い、外観保存の実績、修理の方針について各地区の取り組みを明らかにした。その実態は内部空間整備と直接関わりのない形で外観保存を行っている地区がほとんどで、通りに面した1室について、復元の指導を行っている地区がわずかながらあった。また、補助金交付要綱の分析から、内部空間も修理の補助対象にしている地区が少ないことが問題であるといえる。次に長野県楢川村奈良井伝統的建造物群保存地区を対象に、地区内にある鎮神社の祭礼時における伝統的町家の空間利用と演出に関する調査を行った。そして、祭礼時に町家の空間的特性、とくに通りと内部空間の関係を上手く活用した演出が行われていることが明らかした。また、重伝建地区の修理・修景における改造と祭礼時の内部空間の利用に関係があることを明らかにした。
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