和歌山県串本町大島の3つの集落、大島、須江、樫野について、傾斜環境における生活空間の可能性について検討を加え、地域活性化のための建築計画及び設計的提案に結びつけるデータの採取を目的として、住環境変容のありさまを調査分析した。 この小さな島における3集落に見られる相互間の差違と相同性を把握することは、環境形成の強い要因がどこに潜んでいるかを明らかにしてくれる絶好の研究対象である。 生活環境の把握のために、各戸の訪問実測調査を実施し、その調査により得られた資料をもとに、CADによる図面化、街路の実測調査を踏まえた集落環境基礎資料の整備を行った。さらに間取り調査を実施した事例の中から、精密な個別訪問ヒヤリング、アンケート調査分析をおこない、現時点における生活の実態と変容の過程を明らかにし、現存集落の住環境としての地域特性を明らかにした。またその背景としての社会学的な住環境変容にかかわる関係性について、人々のライフサイクルと家族の関係性を検証することにより、傾斜地に置かれた住環境の、過疎地における変容の有様を空間特性として分析した。 これと同時並行して廃校となった須江小学校の実測調査を行い、この利活用についての建築的な提案を始めている。また、石造洋風建築としては日本最古の樫野崎灯台官舎実測調査及びその報告を作成しており、これら集落にとっての財産を集落活性化の資源として有効活用するための下固めを行ってきている。
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