研究課題/領域番号 |
14550617
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研究機関 | 前橋工科大学 |
研究代表者 |
古賀 紀江 前橋工科大学, 工学部, 助教授 (10295454)
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研究分担者 |
横山 ゆりか 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (20251324)
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キーワード | 高齢者 / 日常記憶 / 場所記憶 / 痴呆症 / 回想法 / 想起実験 / 外出機会減少 / 居住環境 |
研究概要 |
一般に高齢期になると身体機能の低下等から外出機会が減少する人の割合は高くなる傾向が見られる。同時に身体機能の低下等により居住場所移動を余儀なくされる人の割合も高い。こうした場合、日頃慣れ親しんだ環境と関わりを持つ機会が減少し、結果として当事者の生活の質が低下する可能性も考えられる。しかし、減少や喪失があってもある種の記憶は長く留まり、その後の生活にも影響を及ぼし続けるものである。本研究では、記憶のうち場所に関する日常記憶に着目し、外出機会が減少した高齢者自身が記憶する環境の実態や記憶そのものの構造、さらにこれらの記憶を語ることの意味と可能性について実証的に考察する。本年度は、主として(1)本研究に関わる知識、既往研究、海外研究の調査と整理、(2)高齢者の場所記憶を捉える為の調査手法の分析(文献1)、(3)痴呆と場所記憶の関連についての考察に着手した。 (1)では、内外の記憶、環境行動研究の文献収集、海外旅費で国際環境行動学会に出席しアジアや欧米の高齢者居住の現状と環境行動研究動向の最新情報を得た。(2)では被験者の軽費老人ホーム居住者が語る「思い出」の場所の写真(現状)を撮影・用意し、その写真のアングルと語る内容の関係を検証した。結果、提示する写真は話題の中心として予測される対象に焦点をあてながら、それを含む全体的な状況を示す方が有効であること等が明らかになり、実験ツール作成の方針とした。尚、これは日常記憶を扱う回想法にも、新しい知見である。本実験ではある地域に住みつづけている高齢者を対象とし、都市再開発等で劇的に変化した地域と古い環境が保たれている地域を調査する計画が進行中であり、GIS関連のソフト(その他経費)を用いて地域情報を整理中である。場所記憶の一般的な構造を知るために「遊び」に特化した想起実験も学生を対象として行った。(3)では、痴呆性高齢者の環境行動研究の第1人者であるユリエル・コーヘン先生に取材し研究動向や痴呆症になった人が慣れ親しんだ環境の中では道具や様々な「もの」が使えるという多様な事例を紹介していただいた。この知見から生活の中の行為を通して体が記憶していることと「場所」との関わりを明らかにする調査を新設の施設を対象として行う為にCAD関連のソフト等(消耗品費)を用い情報を入力調査票を作成した。
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