情報障害者の種類・程度別の探索方法と活用情報:探索行動実験に基づき、情報障害の種類や程度によって異なる探索方法を明らかにし、さらにその際に活用される主要な情報を整理する。本年度は、探索行動シミュレーションシステム(WASS)を活用し、情報レベルの低い環境下での探索行動における環境適応の再現実験を行った。 1.探索行動実験:WASSによって情報視覚・聴覚)障害者の情報レベルと同等の情報環境を再現し、そこでの探索行動実験を行う。実験手順としては、以下のように4段階の探索行動実験を繰り返し、環境適応によって、活用情報の遷移プロセスを明らかにした。 1)ガイドによる探索行動実験を行う。 2)同目的の自立した探索行動実験を3回繰り返す。 3)被験者・10名、実験補助・約20人・日 2.情報障害レベル別の探索方法・活用情報の整理:探索行動実験結果から障害別探索方法を整理し、さらに各々の主要な活用情報(サイン(点字情報含む)、もの・機器、空間)を整理した。具体的には以下の点が明らかになった。 1)繰り返し探索の回数ごとに注視地点数が変化する。1回目の注視地点数が最も多く、2回目、3回目になるに従って、注視地点数は減少する。 2)繰り返し探索の回数ごとに注視地点の種類が異なる。1回目はサインなどの目印となるものが中心で、2回目は窓、アールコーブなどの空間全体の理解に関係するもの、3回目は絵画、家具など空間のしつらいに関するものとなり、このプロセスは空間理解が深まる課程としてみることができる。 3)繰り返し探索回数ごとに注視地点数の多い場所が異なる。1回目は目的室付近、2回目はスタート付近および目的室手前、3回目は中央部のホール付近が注視地点の多い場所となる。 4)以上の結果からみれば環境適応した段階ではサインなどの記号的な情報はそれほど重要でなく、空間的な見通しや特徴、しつらいが重要になることが推察された。
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