ハートビル法の制定などにより、車椅子使用者が利用可能な建物が増えているが、車椅子使用者を含む群集の火災時における避難に関しては、避難計画を立てるだけの有効な基礎的知見が得られていないのが現状である。本研究は、現実に考えられる車椅子使用者混入集団の避難状況を再現すべく、滞留空間タイプ、流出開口幅、群集密度、混入車椅子台数をそれぞれ設定し、大学体育館において大学生を被験者とする実験を2度にわたって行い、基礎的データを得ようとしたものである。実験の結果、得られた結論は次の通りである。 (1)車椅子使用者が混入した集団においても、通常考えられる2〜8人/m^2の密度の範囲では、開口部付近の流動係数は、密度の増加に伴って比例的に増加する。 (2)開口部付近の流動係数は、車椅子使用者の混入率に伴って比例的に減少し、混入率5%では混入していない場合に比べて約60〜90%となる。 (3)開口幅の影響は、他の条件に比べて小さい。 なお、以上の結果は、いうまでもなく、教示により擬似的な避難群集を作って行った実験により得られた知見であり、避難計画に用いる数値と関連づけるためには、今後さらなる検討が必要である。
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