ハートビル法の制定などにより、車椅子使用者が利用可能な建物が増えているが、車椅子使用者を含む群集の火災時における避難に関しては、避難計画を立てるだけの有効な基礎的知見が得られていないのが現状である。本研究は、現実に考えられる車椅子使用者混入集団の避難状況を再現すべく、滞留空間タイプ、流出開口幅、群集密度、混入車椅子の種類、台数などを組み合わせた数種の条件を設定し、大学体育館において大学生を被験者とする実験を行い、群集流動特性に関する基礎的データを得ようとしたものである。 実験の結果、得られた結論は次の通りである。 (1)車椅子の混入率の上昇に伴って、流動係数が減少していく様子が実験的に定量化された。実験集団は、もちろんパニック時の実群集とは違うので流動係数の絶対値は当然違うものと考えなければならないが、この減少傾向については、ほぼ同等であると考えられる。 (2)この流動係数の減少傾向は、ある幅を持つことにはなろうが、混入率の関数として表示可能であると推察できる。 (3)この関数関係を用い、かつ混入率0%のときの流動係数として、現在実用に供されている1.5人/m・secを使うことにすれば、車椅子混在集団の流動係数がそれと同等の意味の数値として実用に供しうると考えられる。
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