本件旧は、日本の地方都市に焦点を当て、地方都市が近代化していく過程において建てられた近代建築について、文献調査からの復元と、それらに対する評価を試みる研究であり、そのケース・スタディとして、愛知県下の豊橋・岡崎・刈谷・西尾・一宮・津島の6都市の近代建築を対象としている。研究全体は4年度にわたって行なうこととし、その3年度目である平成16年度は、愛知県東三河地方の拠点都市である豊橋を対象地域とし、地元自治体の文化財担当者や都市計画担当者の協力を得ながら、近代建築の現存調査と文献調査による復元を試み、「近代建築復元リスト」を作成した。その結果、以下の近代建築を代表的な事例として扱うこととした。 愛知大学公館(旧第15師団長官舎)、愛知大学記念館(旧第15師団司令部)、豊橋ハリストス教会聖堂、旧第一銀行豊橋支店(現存せず)、旧額田銀行豊橋支店(現存せず)、旧松山尋常小学校校舎(現存せず)、豊橋市公会堂、中京銀行豊橋支店(旧名古屋銀行豊橋支店)、豊橋市上水道施設 これらの近代建築に対して、個々の建築が持つ特徴を把握しながら、都市の近代化に果たした役割を評価した。例えば、旧第一銀行豊橋支店、旧額田銀行豊橋支店、中京銀行豊橋支店は、いずれも市街地の中心に位置した商業地における鉄筋コンクリート造の銀行建築であり、市街地の不燃化の大きな役割を果たした建築である。また、豊橋市公会堂は、市制25周年記念事業による建設であるが、都市の規模を勘案すると、6大都市の公会堂に相当する規模の公会堂を地方都市が建設した事例として、都市の近代化の方向性を示す存在である。さらに、旧松山尋常小学校校舎をはじめとした鉄筋コンクリート造校舎は、6大都市における学校校舎の鉄筋コンクリート造による建て替えが地方都市にも波及し、地方都市が積極的に行なった事例であると評価できる。
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