1.研究期間を通して、国内外の研究資料を探索し、すでに所有している資料はその整理を行った。 2.また、全体的な総論のとりまとめに先立ち、テーマに関連する個々の事例の個別研究を行なった。 (1)フィンランドのモダニズム建築が継承しているのは、前代のユーゲント建築ばかりでなく、より古い伝統的な建築物もある。そのため、広義の地域環境が建築に及ぼしている影響を評価する試みとしてモダニズム建築家A.アールトと中央フィンランド地方の建築伝統のつながりを検討した(2003年3月)。 (2)また、フィンランド・モダニズムを理解するためには、同時並行して展開されたスウェーデン・モダニズムとの比較も重要である。その立場から建築家G.アスプルンドに注目し、アスプルンド・セミナー(2003年7月)にパネラーとして参加し、さらに私費によるスウェーデンのストックホルム周辺へのアスプルンド作品視察旅行(2003年8月)を実現させた。 3.上記のような個別事例研究を踏まえて、2年間の研究成果として最終的な報告をまとめた。 ユーゲント期からモダニズム期への移行において、建築の表面上の姿が大きく変化する一方で、その背後にある理念である「ナショナル・ロマンティシズム」は不変であることが、フィンランド建築のもっとも本質的な特徴を形成しているとの認識から、論文「フィンランドのナショナル・ロマンティシズム建築に関する基礎的研究」(2004年6月)を執筆して、研究成果報告書として公表した。
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