今年度は、主として中世の代表的な住宅遺構に関する発掘調査報告書を調査した。その方法は、まず過去の『年報中世史研究』の最新発掘情報より、大規模な住宅遺構を含む遺跡を262件ピックアップした。その中から鎌倉時代と南北朝期に該当し、かつ良好な住宅遺構を含み、領主層の生活形態を推測する上で意味があると思われる遺構を選別したところ、151件の遺跡がとりあげるべきものとして浮かび上がった。それらの収集したデータを整理し、遺跡の存続期間、構造の種別(掘立柱建物、礎石建建物、土台建て建物、その他)、敷地規模、囲繞施設の種別、建物棟数、主要な柱間寸法、主屋の規模と形式、遺構の特色などをデーターベース化した。これらの作業で、この10年間に飛躍的に中世武家住宅遺構が発掘されていることが判明した。とくに、すでに平安末期から地方で堀に囲まれた方形居館が成立していたことが判明した点や、その多くが総柱の掘立柱建物であり、これが鎌倉後期から礎石建の総柱型建物へと変化する傾向が把握できたことは、これまでの中世住宅史のイメージを変えるものであった。そこで、とくに重要な20件について、国立国会図書館で発掘調査報告書の該当部分をコピーし、その内容を検討するとともに、更新したコンピューターを用いて画像データ(とくに遺構図)を取り込み、縮尺などを調整して比較検討や平面復元などに備える準備まで行った。
|