本研究は、文献史料と掘立柱の住宅遺構から、中世の武家住宅と上層民家の関係を検討することを目的としている。平成14年度には、代表的な住宅遺構の発掘調査報告書を調査し、大規模な住宅遺構を含む遺跡を262件ピックアップした。その中から在地領主層の生活形態を推測する上で意味があると思われる遺構を選別し、151件の遺跡について概要を記録した。遺跡の存続期間、構造の種別(掘立柱建物、礎石建建物、土台建て建物、その他)、敷地規模、囲繞施設の種別、建物棟数、主要な柱間寸法、主屋の規模と形式、遺構の特色などの項目からなるデーターベースを作成した。その結果、平安末期から地方では堀に囲まれた方形居館が成立していたことが判明し、その多くが総柱の掘立柱建物であり、鎌倉後期から礎石建の総柱型建物へと変化する傾向が把握できた。平成15年度から16年度にかけて、とくに重要な20件の発掘調査報告書を調査し、現地調査も11件(鎌倉周辺遺跡、仙台平野遺跡群、福島県荒井猫田遺跡、熊本県灰塚遺跡および二本木前遺跡、大分県大友氏関係遺跡、富山県下村加茂遺跡および宮町小西北遺、福岡県香椎遺跡など)を実施して、現地の地勢確認、発掘担当機関の調査内容などを確認した。また、鎌倉武家住宅の論考をまとめ、現在、一本を投稿中であり、別の一本が投稿準備中である。
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