研究の目的は、日本において「信仰空間」が存在することを、所謂実証的に指摘することである。 具体的には、江戸時代における「黄檗派の禅」及び「念仏という信仰」の歴史の中に、「信仰の場所」を的確に指摘することである。4年間の研究実施計画にしたがって、計画どおり実施した。 1年目は、黄檗派寺院における「座敷本堂」の指摘である。「江月寺(福岡県所在)本堂」がある。 2年目は、浄土真宗の信心に係わる「信仰空間」の指摘である。「民家の中での信仰空間」を指摘した。「永沼家住宅(福岡県所在)の仏間」がある。 3年目は、黄檗派の禅僧たちによる、信仰空間の創造である。「普門寺(高槻市所在)の禅堂」の指摘は、建築史上の新しい知見である。 4年目は、親鸞をはじめ浄土真宗の代表的な信仰する者の残した文章を捉えて、「念仏の信心に係わる場所」を理論的に提示しようとする研究に挑んだ。その結果、やはり「日常の場所」にこそ「信心」が充ちていることが必要であることを、指摘できたと考える。そして、最終年度においては、これらを総合的に纏めた。 この研究の意義については、研究目的と研究方法において二つの学問分野(建築史と建築論)を総合することによって、全世界に公表できる水準に引き上げることができたと考える。 さらに具体的な内容に関しては、「日常の空間」において「人間の信仰」が行われる「信仰の空間」は、ともに所謂「日常の住まいの中の座敷」であった。さらにいえば、日本における信仰空間は、日常生活の住まいの中の座敷にある、ということである。
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