研究課題/領域番号 |
14550645
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
小澤 朝江 東海大学, 工学部, 助教授 (70212587)
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研究分担者 |
水沼 淑子 関東学院大学, 人間環境学部, 教授 (50147873)
池田 忍 千葉大学, 文学部, 助教授 (90272286)
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キーワード | 女性 / ジェンダー / 内部空間の演出 / 障壁画 / 天皇 / 皇后 / 御所 |
研究概要 |
本年度は、泉涌寺本坊御座所、法然院方丈、宝鏡寺書院を対象に調査・検討を行うとともに、昨年度に引き続き旧東宮御所(現:迎賓館)の資料収集・分析を行った。判明した諸点は次の通りである。 1.泉涌寺本坊御座所は、文化15年(1818)に女御御里御殿として建てられ、明治初年に泉涌寺へ移築されたもので、御里御殿という出産用の建物の内部空間が残る稀少な例である。内法高・天井高および仕様は京都御所皇后常御殿(安政2・1855建築)にほぼ準じるが、障壁画として上段の間に「四季瑞鳥」、下段の間に「子の日の小松引」を描く点が異なる。前者は天皇常御殿剣璽の間と同じ画題であり、皇位継承者の誕生を期したものと判断され、一方後者は、「源氏物語」の初音・若菜帖で明石の君が東宮を出産した因む画題で、婚礼用屏風にも例が多い。特に「四季瑞鳥」は、尼門跡である中宮寺(江戸中期)の書院や、皇女を当主とした桂宮家の表書院(弘化4年・1847、現:二条城本丸御殿)等、皇女関連の御殿に例があることが判明し、皇室の女性の身分を示す表象として注目される。 2.法然院方丈は、昨年度調査を行った霊鑑寺書院と同じ延宝度後西院御所から移築された建物で、霊鑑寺書院が院の御休息所であったのに対し、法然院方丈は皇女の姫宮御殿であり、同じ御所内の男性用と女性用の建物を比較するため調査を行った。結果、法然院方丈の方が天井高は低いものの、柱・長押・棹縁等の寸法は霊鑑寺書院とほぼ同様で、一般に近世建築の寸法は柱太さを基本とした木割で決定されるといわれるが、ここでは部材との比例より天井高さが優先されていることが判明した。昨年度、皇后常御殿の高さ寸法や仕様は天皇常御殿との対比で決定されていることを指摘したが、後西院御所でも同様の設計手法が取られていることが明らかとなった。 3.旧東宮御所(現:迎賓館)について、設計図面(宮内庁蔵。複写フィルムは迎賓館蔵)・工事録の調査を行い、皇太子・皇太子妃用の2階公用室について約1000枚の設計図書を収集した。結果、昨年度分析した皇太子妃謁見室の「孔雀図」が設計の早い時期から計画されていることなどを明らかにしたが、詳細な分析は来年度継続して行う。
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