研究概要 |
本研究は自然エネルギー利用の時代背景を受けて、中でも太陽光エネルギーを吸収し熱エネルギーに変換する太陽光・熱エネルギー変換システム膜の高性能化を目指し、特に変換膜におるナノ粒子構造、表面メゾスコピック凹凸構造に注目して研究を遂行した。 光熱変換膜においてはAgナノ構造の光学特性、熱安定性特性の評価を行った。その結果を踏まえて太陽光・熱エネルギー変換システム膜を作製し373K、大気質量(AM)1.5において太陽光熱変換効率(η)0.72、到達温度550Kを実現した。 我々はすでに不完全に窒化したスパッタA1-N膜が高い太陽光エネルギー吸収率を示すことを見出している。理由はA1とA1Nが混在することで適度な吸収媒質であると共に表面に形成されたメゾスコピック凹凸により傾斜屈折率分布が実現しているためである。しかしこの膜は放射率において改善すべき余地を残している。 そこで金属A1スパッタ膜においてメゾスコピック表面凹凸構造制御を異なる基板温度での二段階成膜により実現し、その高赤外線反射率特性を活かして、太陽光吸収層としてのA1-Nスパッタ膜を成膜し、さらに凹凸表面上での透明反射防止膜(A1N)の有効性を見出し、結果として太陽光吸収率α=0.92,放射率ε=0.06(373K)を達成した。 これとは別のアプローチとして表面凹凸を有するA1-Nスパッタ膜の高い太陽光吸収率を活かし、且つ放射率を低減させるためにITO透明導電膜による被覆を試みた。室温で成膜しその後熱処理することで放射率を制御できることが明らかとなった。
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