本年度の始めに、同骨格構造でカチオン組成の異なるゼオライト(A型ゼオライト)間で、マイクロ波加熱特性を理論的、実験的観点から比較した。誘電特性から計算される理論的吸収効率の大きさは、組成の違いにより次の順となった。Na_<12>-A>Na_6K_6-A>Na_<10>Ca_1-A>Na_4Ca_4-A(左記記号は単位胞当たりのカチオン組成とゼオライト種を表す。以下同じ)一方、実験的に求めた加熱到達温度は、上記の順序と全て一致した。この事から、この計算に用いた手法(誘電スペクトルの解析、解析結果を用いた高温・高周波数領域のスペクトル計算)は妥当であると結論した。 次に、同じ手法を用いて、異なる骨格構造のゼオライト(A型、モルデナイト(Mと略記)、L型(L))間のマイクロ波加熱特性を、理論的計算から正しく予測可能か否かを検討した。理論的計算では、吸収効率は次の順になった。Na_<12>-A>Na_6K_6-A>Na_<4.3>-M>Na_<10>Ca_1-A>K_9-L>Na_4Ca_4-A実測した加熱到達温度は次の順であった。Na_<12>-A>Na_<4.3>-M>Na_6K_6-A>K_9-L>Na_<10>Ca_1-A>Na_4Ca_4-A順序は2箇所(アンダーライン箇所)で相互に異なった。 不一致の箇所は何れも構造が異なるゼオライト間で起きている事から、構造の違いが関係していると考えられる。今回比較したゼオライト間では、構造の密度が最大39%も異なる。マイクロ波吸収には、照射容器への試料の充填密度が関係するする事が分かっている。そこで、構造密度の違いを補正して実測と比較した。補正後は実測により近い結果となったが、不一致は解消されなかった。 異なる骨格構造を持つゼオライト間のマイクロ波加熱特性の比較では、小さな吸収効率の差しかないものの間では一部で不一致は認められたが、基本的には我々が提案した計算手法で、加熱特性の予測が可能である事が分かつた。構造密度が比較的大きな影響を及ぼしている事が分かった。
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