研究概要 |
本研究では、簡便・低コストな新規プロセスを用いて、ナノ粒子から成るチタニア繊維の合成を行い.TiO_2粒子の粒径、結晶性、結晶型および繊維中のメソポア構造を制御することにより高い光触媒活性をもつチタニア繊維を創製することを目的としている。本年度は、前年度の結果を基に条件を絞って高光触媒活性をもつチタニア繊維を合成し、それを用いてチタニア繊維の粒径、結晶性、結晶型、および微細構造やメソポア構造が光触媒特性に及ぼす影響を明らかにした。また、SiO_2などの添加物がチタニア繊維の生成と光触媒活性に及ぼす影響も調べた。得られた成果を以下に述べる。 1)TiO_2ゾルI(粒径7nm)を用い、濃度2wt%のTiO_2粒子懸濁液から乾燥温度90℃で作製した繊維の平均繊維幅は、77.2μm、標準偏差は8.75μmであった。TiO_2繊維はアナターゼ型であるが、900℃でルチル型へ相転移した。TiO_2繊維の熱処理温度がNOxの分解率に及ぼす影響を調べた。熱処理温度300℃までは温度の上昇とともに触媒活性が低下し、400℃では再び上昇して800℃までは分解率98%の高い触媒活性を示した。しかし、ルチルへ相転移する900℃では急激に活性が低下した。熱処理温度300℃での比表面積は200m^2/gと非常に大きいが、熱処理温度の上昇とともに比表面積は減少し、800℃では18m^2/gとなった。触媒活性には結晶性も影響を及ぼすことが分かる。 2)TiO_2-SiO_2繊維の調製では、TiO_2ゾルT(アナタース型、粒径;6nm、粒形;球)とSiO_2ゾルS(粒径;8〜11nm,粒形;球)を用い、SiO_2添加率10〜100wt%におけるTiO_2-SiO_2繊維の調製を試みた。SiO_2添加量0〜100wt%で繊維が生成した。TiO_2(T)単独繊維は900℃までアナタース型であるが、1000℃で100%ルチル型へ相転移した。一方、TiO_2(T)-SiO_2繊維では、1000℃でもアナタース型が残っていた。SiO_2は、TiO_2の相転移を抑制する。 3)TiO_2-SiO_2繊維によるNOx分解率は、SiO_2添加率の増加とともに、76%(SiO_2;0wt%)から93%(SiO_2;40wt%)に増大した。60wt%以上のSiO_2添加では低下した。TiO_2の光触媒作用にSiO_2の吸着作用が加わるとNOx分解反応の効率が上がると考えられる。また、TiO_2繊維の強度は、SiO_2添加と熱処理温度の上昇によって著しく高くなることが明らかとなった。
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