チタン酸ビスマス強誘電体薄膜は、結晶構造中のBiサイトを希土類元素で一部置換することにより強誘電性が飛躍的に向上することが報告されており、不揮発性メモリへ応用するのに非常に優れた材料といえる。しかしながら、これらの材料を実際のメモリデバイスへ応用するには、比較的低温域(約600°-Cあるいはそれ以下)での薄膜化が可能であり、かつ強誘電特性が劣化しないことなどが望まれる。 そこで本研究では、精密な組成制御が可能な化学溶液法を用いて希土類元素ドープチタン酸ビスマス強誘電体薄膜を合成し、低温作製膜において良好な強誘電性を得ることを目的とした。 その結果、焼成温度700°-Cで作製したNd-ドープチタン酸ビスマス(BNT)薄膜において強誘電性が飛躍的に向上し、残留分極値(P_r)と抗電界(E_c)はそれぞれ、22μC/cm^2と.70kV/cmと非常に優れた値を示した。また、NdイオンがBIT結晶構造中のBiイオンを完全に置換していることがラマンスペクトルより確認された。さらに、BNT前駆体膜にエキシマUVランプを照射するプロセスを導入し、焼成温度550°-Cで作製したBNT薄膜において良好な強誘電性を示す薄膜の作製に成功し、その残留分極値(P_r)と抗電界(E_c)はそれぞれ、13μC/cm^2と88kV/cmであった。 このことより前駆体膜へのエキシマUVランプ照射が、BNT薄膜の低温結晶化、微構造の改善および強誘電性の向上に有効であることを見いだした。 以上のことから、エキシマUVランプ照射プロセスは、不揮発性メモリの応用に期待できると考えられる。
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