研究概要 |
チタン酸ビスマスは希土類元素(La, Pr, Nd, Sm等)で一部置換することにより、強誘電性が飛躍的に向上することが報告されており、強誘電体不揮発性メモリへ応用するのに非常に優れた強誘電体材料の1つといえる。しかしながら、600℃以下の低温作製膜において良好な強誘電性が得られたという報告は少ない。そこで本研究では、化学溶液法を用いて希土類元素ドープチタン酸ビスマス強誘電体薄膜を低温作製し、その薄膜の結晶性、微構造おび強誘電性の評価を行った。 各金属有機化合物原料の配位を溶液中で制御することにより、均一かつ安定な希土類元素ドープチタン酸ビスマス前駆体溶液を調製することができた。結晶構造中のBiサイトヘドープするのに最も効果的な希土類元素はNdであり、焼成温度700℃で作製したBNT薄膜は良好な強誘電性を示した。その残留分極値(P_r)と抗電界(E_c)は、それぞれ22μC/cm^2と70kV/cmとなった。また、BNT薄膜におけるNd-ドープ量の最適な組成はBi_<3.35>Nd_<0.75>Ti_3O_<12>であることが分かった。BNT前駆体膜は比較的低温である600℃の熱処理により結晶化した。その薄膜は比較的良好な強誘電性を示し、残留分極値(P_r)と抗電界(E_c)はそれぞれ7μC/cm^2と88kV/cmとなった。さらなる低温合成を目指して、エキシマUVランプ照射プロセスを採用した結果、前駆体膜中の残留有機基の除去および微構造の改善に有効であり、焼成温度550℃の低温で作製したBNT薄膜においても良好な強誘電性を示した。また、エキシマUV照射BNT薄膜のリーク電流特性は、印加電圧3V程度まで10^<-6>A/cm^2以下のリーク電流密度であり、比較的に良好なリーク電流特性が得られた。 以上のことから、本研究の薄膜合成技術が半導体メモリ分野に適用できると期待できる。
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