研究概要 |
固定化酵素の至適pHを固定化担体の表面に存在する官能基によって制御することを目的として、平成14年度は担体表面の酸性基(カルボキシル基)の効果を検討した。その結果、固定化酵素の至適pHは結合した共重合体中のカルボキシル基含有量が多くなるにつれてより塩基性側へと変化し、固定化担体の表面に存在する酸性基によって塩基性側に変化させるうることが明らかとなった。これに引き続き、平成15年度は担体表面の塩基性基(アミノ基)の効果についての検討を試みた。固定化担体としてはマグネタイト粒子(平均径0.2μm)を用い、先ず、粒子表面からアクリル酸とアクリルアミドのグラフト共重合を開始させ、組成(カルボキシル基含有量)の異なる共重合体を結合させた。次いで、このカルボキシル基との縮合反応によってエチレンジアミンおよびN,N-ジメチルエチレンジアミンの結合を試みたが、これらの担体粒子表面への導入を確認することができなかった。このため、モデル実験として、マグネタイト粒子に固定化したフェニルホウ酸の酸性度指数pKaが塩基性基の導入によってどのように変化するかを調べた。その結果、固定化フェニルホウ酸のpKaは周囲のカルボキシル基の影響によって遊離のフェニルホウ酸よりも大きくなるが、アミノ基(ジメチルアミノ基)を同時に導入することによって低下することが明らかとなった。このことは固定化担体の表面に存在する塩基性基によって固定化酵素の至適pHを酸性側に変化させるうることを示しており、平成14年度の成果と併せて、固定化酵素の至適pHを担体表面の官能基によって任意に制御するための指針が得られた。
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