研究概要 |
固定化酵素の至適pHを固定化担体表面の官能基によって制御することを目的として、担体表面に導入した酸性基(カルボキシル基)および塩基性基(アミノ基)の効果を検討した。マグネタイト粒子(平均径0.2μm)を固定化担体として、まず、粒子表面からアクリル酸とアクリルアミドのグラフト共重合を開始させ、組成(カルボキシル基含有量)の異なる共重合体を結合させた。次いで、このカルボキシル基との縮合反応により担体粒子表面に酵素(グルコースオキシダーゼ)を固定化した。固定化したグルコースオキシダーゼの活性とpHとの関係を追跡した結果、その至適pHは、遊離酵素の至通pH(4.0〜5.0)とポリアクリル酸を結合させたマグネタイト粒子表面に固定化した酵素の至適pH(7.0)との間の値となり、結合した共重合体中のアクリル酸成分(カルボキシル基)の含有量が多くなるにつれてより塩基性側へと変化した。一方、カルボキシル基との縮合反応によってエチレンジアミンおよびN, N-ジメチルエチレンジアミンの結合を試みたが、これらの担体粒子表面への導入が確認できなかった。このため、モデル実験を行い、マグネタイト粒子に固定化したフェニルホウ酸の酸性度指数pKaが塩基性基の導入によってどのように変化するかを調べた。その時果、固定化フェニルホウ酸のpKaは周囲のカルボキシル基の影響によって遊離のフェニルホウ酸よりも大きくなるが、アミノ基(ジメチルアミノ基)を同時に導入することによって低下することが明らかとなり、担体の表面に存在する塩基性基によって固定化酵素の至適pHを酸性側に変化させるうることが示唆された。本研究の成果、すなわち、担体表面の官能基による至適pH制御技術は、固定化酵素の実用性向上に大きく寄与すると同時に、酵素を利用したバイオセンサーの研究にも反映された。
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