ZnS:Mn^<2+>ナノクリスタルは、シリカで表面修飾を施すことにより、蛍光強度が向上する。本研究では、逆ミセル法により合成したZnS:Mn^<2+>/SiO_2ナノ粒子をシリコーン樹脂中に分散させたナノ蛍光体分散シートを作製し、その蛍光特性を評価した。また、ミクロサイズのZnS:Mn^<2+>バルク蛍光体分散シートと比較検討した。ナノ蛍光体分散シートはバルク蛍光体分散シートと比較すると透明性が著しく高い。可視光の波長よりも小さいナノ粒子ではレイリー散乱が起こり、バルクのミー散乱とは異なる。さらに、ナノ粒子のサイズが小さくなるほど散乱光が粒径の6乗に反比例して小さくなるため、ナノ蛍光体分散シートでは透明性が向上する。蛍光体分散シートを前方から励起し、前方で蛍光を検出する際に、シートの裏側にMgO白色板を用いた場合と用いなかった場合の蛍光強度を比較した。その結果、バルク蛍光体分散シートではMgO板を用いた効果は見られなかったが、ナノ蛍光体分散シートではMgO板を用いることにより蛍光強度が約1.5倍に引き上げられることがわかった。これはナノ蛍光体分散シートの高い透明性による効果で、MgO板を用いない場合はシートの後方に透過した蛍光がMgO板を用いることによって反射され、再びシート内を透過して前方に引き出されると考えられる。また、蛍光体分散シートの後方から励起した場合の蛍光強度を測定したところ、バルク蛍光体分散シートでは粒子濃度が増加すると蛍光強度が低下するのに対し、ナノ蛍光体分散シートでは逆に上昇することが確認された。この結果もナノ蛍光体分散シートの高透明性に起因する。以上より、樹脂封止する蛍光体をナノサイズ化することで蛍光取り出し効率を向上できると結論付けられる。
|