本研究においては、磁場印加した熱CVDプロセスに対して、成膜基板を均一磁場中および最大磁場勾配位置に設置した場合における膜構造の相違に関して調べた。本年度においては、まず既存の実験装置において反応内における基板位置を可変となるように改良した。 基板を最大5Tの均一磁場中に設置した条件で、原料であるFeCl_3粉末の重量減少に関して調べた。その結果、磁場強度の増加に伴い、原料ガスの消費量が増大することが分かった。これは、およそ磁場強度の二乗に比例しており、予想した結果に一致した。現在、このデータを解析する目的で、磁化力対流を考慮した移動現象モデルを構築中である。同解析は、来年度において、流体解析ソフトウエアFluentを購入し行う予定である。 また上述の改良装置を用いて、均一磁場および磁場勾配中において得られた鉄膜の組織を調べた。均一磁場印加において得られた以下の結果は、磁場勾配中においても同様であることが確認された。 1、磁場勾配印加によっても、島状結晶の析出する条件においては、立方体形状を有する結晶の出現確率が多いことが分かった。これらは(100)優先配向を呈した。 2、島状結晶の合体により膜状結晶が形成するが、これにより(100)配向が消失することが分かった。 3、膜状結晶表面はファセットを有している。 しかしながら、磁場勾配中において得られた鉄結晶膜のファセット表面は、非常に平坦であることが分かった。これは表面の凹凸が、数nmであり、均一磁場勾配で得られた膜に比較し、1オーダー小さかった。また、表面には数十nm程度のバンド状の構造も存在することが分かった。
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