本研究においては、平成12年度の基盤研究補助金により作製した実験装置を改良し、強磁性膜の熱CVDプロセスにおける強磁場、強磁場勾配印加の影響に関して解明することを目的とした。初年度においては、まず既存実験装置において、反応器内における基板位置を可変できるように改良した。基板を最大80T^2/m程度の磁場勾配下に置き、成膜を行った。また原料ガスであるFeCl_3の消費量に及ぼす磁場(勾配)印加の影響についても調べた。この結果以下のことが分かっている。 1、磁場勾配印加においても、立方体形状を有する島状結晶の出現傾向が高く、(100)優先配向に寄与している。 2、膜状結晶においては、表面結晶粒のファセット面の平坦性に磁場印加効果が現れ、均一磁場に比較して磁場勾配中の方が平坦な表面が得られることが分かった。 3、磁場勾配下に位置する原料気化器においては、磁場の増加により原料の消費量が増加することが分かった。 平成15年度においては、これに引き続いて主に、項目3に関して反応器内のガスの流動に及ぼす磁場勾配印加の影響をソフトウエアFluentを用いて行った。計算においては、ガス物性値の温度変化、磁化率の温度変化を考慮し、反応器壁の温度分布の実測値をインプットしてガス流動のシミュレーションを行った.この結果、気化器出口におけるガス速度が、実験条件範囲において最大2倍程度も上昇することが分かり、原料減少量の磁場印加依存性に関して、半定量的に現象の説明をすることができた。今後は、反応器内に存在する水素の影響、およびそれぞれのガス濃度分布に関し、更に詳細な研究を行うための基盤を作ることができた。
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