本年度は、一連のその場観察実験のうち、高解像度で画像をAD変換し、高精度でデジタル画像を制御出来るシステムを構築し、実際の観察でその有用性を確認した。構築したシステムでは、その場観察の画像はすべてデジタルで直接記録し、それをコンピュータ上で1フレーム毎に解析するようにした。これにより記録時やその後の画像処理における画像の劣化やノイズが抑えられた。観察に用いた試料はBN膜及びGaN膜である。ICP-CVDで作成したBN膜の場合は、一般にaBN、tBN、cBNの3層構造をしていることが知られているが、その予備観察から、tBNは基盤付近で特定の乱れ方をしており、それが膜の成長に従って方位をそろえる構造になっていることが分かった。このtBN膜について応力を加えるその場観察実験をしたところ、非常に大きく変形し、また繰り返し変形に対しても破壊しないことが分かった。ダイヤモンドに次ぐ硬度を持つcBNの下部組織であるtBNがこのような変形能を持っていることは、大きな驚きであり、BN膜の成長機構に新たな知見を加えるものである。これに対し、GaN薄膜の予備観察では、GaNの原子構造を直視できただけでなく、その結晶性を低下させる原因となるInversion domain boundaryが積層欠陥によって終端するという、膜の高品質化に対する重要な結果を得ることができた。この物質を用いて、本システムの点分解能とコントラストの確認を行った結果、N原子の非常に弱いコントラストにも関わらず、画像処理により0.113nmの点分解能が必要なGaNの原子像を結像できることが分かった。
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