昨年度までの研究によりシステム自身のノイズがなく、微妙な階調を再現することが出来る解像度の高い連続的なデジタル記録システムを構築することが出来た。本年度は実際にこのシステムを用いて実用材料に対するその場観察実験を行った。 まず、反応性ぬれへの応用では、新たにぬれ広がる溶融合金先端で稠密面のlayer by layerの成長様式により反応相が生成しているのを見いだした。さらにぬれの速度の変化によって成長様式が変化すること、全ての反応相がぬれの先端近傍で連続的に生成する事が明らかになった。また、基盤の種類によりぬれの形態に大きな差が見られ、反応組織の形成は溶融合金中の構成元素の固溶度、及び実際の局所濃度とぬれ先端の速度等の相互関係により決まってくることが明らかになった。これらは反応性ぬれにおける組織形成の理解に大きな前進をもたらした。他方、セラミックスの粒界破壊機構を明らかにするための電子顕微鏡内破壊実験解析への応用も試みた。本装置及びピエゾ引っ張り試験電子顕微鏡ホルダーを用いることによって、破面を大気にさらすことなく、原子レベルで正確なクラックパスを同定することが可能になった。本研究の結果、窒化ケイ素の粒界破壊では、破面は粒界層と結晶粒の境界を進むことが明らかになり、さらにこれはダングリングボンドの数に関係していることが判明した。粒内破壊においても、ボンドの数が少ない領域をクラックが進行することが分かった。
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