純ニッケル、純銅、Al-3mass%Mg合金を対象に、いずれも広く変形温度、歪み速度、最終歪み量を変えて単軸圧縮試験を行い、変形特性、結晶粒組織観察ならびに結晶粒界解析を行った。純ニッケルならびに純銅では、動的再結晶が生ずる場合には、変形温度が低温になるほど、また歪み速度が高くなるほど、すなわち高Z変形条件で集合組織が発達した。高温、低歪み速度すなわち低Z変形条件では集合組織はほとんど形成されなかった。典型的な高Z条件と低Z条件で試料を作製して結晶粒界の解析を行ったところ、低Z条件では双晶境界の頻度が全大角粒界の50%以上にも達するのに対し、高Z条件では10%にも満たなかった。さらに高Z条件で変形した試料について、結晶粒界に沿った結晶方位の分布を調査したところ、同一結晶粒内に結晶方位差が15度を上回る領域が頻度高く存在していることが判明した。このことから、高Z変形条件では、動的再結晶初期に生ずる結晶粒界の湾曲によって結晶粒界近傍に結晶方位差の大きい下部組織が形成され、それが新粒生成をもたらすと考えた。この新粒は変形によってある量の結晶回転を変形の安定方位に向けて生じた後に再度新粒化する。この結晶回転によって集合組織が発達したのではないかと考えられる。一方低Z条件では、結晶粒界付近に結晶方位差の大きな領域が形成されず、歪み誘起粒界移動により新粒が生成される。新粒は変形の安定方位に向けた結晶回転の影響を受けるが、粒界移動の過程で双晶形成により結晶方位がランダム化するために集合組織が発達することはないと考えると変形条件による集合組織形成の変化は理解できることになる。歪み誘起粒界移動が困難と考えられるAl-3mass%Mg合金の動的再結晶では圧縮変形集合組織が発達したが、容易回復方位とされる(100)(圧縮面)も併行して成長した。これの形成機構については次年度の課題としたい。
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